生活に 彩りを 添える器

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Yuko Okazaki

少し前までは敷居が高いイメージであった「陶器」。最近では陶器市が商業施設で開催されていたり、アパレルショップに置いてあったりなど、お洒落な器が身近なものになってきました。ところで、少し奮発して手に入れたお気に入りの器を、大切に戸棚へ仕舞まってはいませんか?お客様のおもてなしに使うのも素敵ですが、それだけではもったいない。とっておきの器を日常使いしてみると、いつもの食事がワンランクアップしたように感じます。忙しい時には出来合いのお惣菜を買って、お気に入りの器に盛りつけてみましょう。味や匂い、食感だけでなく、目でも食事を楽しむことができるご褒美タイムに変身です。そんな素敵な食事の在り方に気付かせてくれたのは、陶芸家の岡崎裕子さん。いつも側にある毎日の大切さ、それを味わう丁寧な暮らしに、沢山の気付きを得ることが出来ました。

Introduction

第10回は陶芸家の岡崎裕子さん。白の釉薬(うわぐすり)のしっとりした風合いで、大きなトンボがモチーフの作品が特徴的な女性陶芸家です。加飾による華やかさを持ちつつ普段使いしやすい陶器が人気で、コンセプトストアのPLAIN PEOPLEや現代アートの小山登美夫ギャラリーでお取り扱いされています。陶芸家の前身はアパレル業界のイッセイミヤケの広報担当。23歳にして一念発起して笠間の陶芸家に弟子入りし、独立するというエネルギーに満ちた経歴を持つ一方で、がんサバイバーとして社団を立ち上げ、がんに係る方々が生きやすい社会を実現するための社会活動をしています。女性であり、母であり、陶芸家であり、がんサバイバーでもある岡崎さんの土台の強さに迫りました。

Made by

staff

photograph: Amiri Kawabe

interview&text: Kaori Hakozaki

Section.01

陶芸家の源泉

白い釉薬でマットな風合い。手に取ると、しっとりと手のひらに馴染む温かな陶器。陶芸家 岡崎さんの作品は、どのような背景から生まれたのでしょうか。

「幼少期は空想ばかりしている子供でした。窓の外を眺めて想いを巡らせたり、一人遊びが好きでよく絵を描いたりしていました。小学校低学年の頃からデザイナーを目指し始め、着せ替え人形の洋服デザインコンテストによく応募したりしていましたね。絵画教室に通い始めたのも、この頃です」習い事は水泳や習字もあったそうで、特に集中できる習字が好きだったのだとか。作品づくりへの発想力や集中力は、岡崎さんが幼少期に培った才能なのかもしれません。

「デザイナーになるために、高校生の時は美術大学の予備校へ通っていました。ところが親との折り合いが合わず、大学への進学を挫折することに。代わりに英語を専門とした短期大学へ行くことになったんです」それでも夢を諦めず、英語のスキルを生かしてニューヨークのファッション専門学校への留学を希望したところ、こちらも敢え無く挫折。二度の大きな挫折を味わうも、このことが転機になりました。「この時に相談していた方の紹介で、三宅 一生さんの下でイベントで来日するショーモデルのアテンドのアルバイトをさせて頂くことになったんです。三宅さんがモデルさん達を会食にお連れした際に私も同席し、英語力をかって頂いてイッセイミヤケに入社することになりました」そうして3年間をイッセイミヤケの広報担当として務めることになったのだとか。最先端のファッション業界は、非常に刺激的な経験だったようです。「ファッション業界では、身なりだけでなく生活全般を美しく生きている人たちに多く出会いました。少ないものを、一つ一つこだわりを持って、丁寧に使っているんです」岡崎さんの作る器のコンセプトの一つ『素敵な器を日常使いする』という着想は、この時に得たのだそう。

三宅氏との仕事を通して「自らものづくりをしたい」という気持ちが高まり、ファッション業界から一転、笠間の陶芸家 森田氏の下へ弟子入りすることに。陶器に興味を持った理由は、多くの人や工場が関わって出来上がる洋服よりも、ゼロから自分の手で作り上げることができる陶器に魅力を感じたからなのだとか。5年間の弟子入り期間を経た後、そこで出会ったギャラリーのオーナーに声をかけられ、独立して2年で初めての個展を開くという、幸先の良い門出となりました。「いつも特別な目標を持っている訳ではないのですが、人生の節々でたくさんのご縁があったおかげで、今の私がいます」そう話す岡崎さんですが、目の前に立ちはだかる壁に、懸命に取り組む姿勢があればこそ。二度の挫折を糧にしている姿は、とても力強く感じられます。

  • 幼い頃の岡崎さんの写真。ハロウィンでは友達と変装して遊ぶなど、よく自分たちで工夫をして遊んでいたそう。今と変わらないはっきりとした目鼻立ちが印象的です。
  • ファッションの勉強をしていた時のデッサン。インスピレーションを受けたモデルを参考に、立ち姿や衣装の細部まで描かれています。

Section.02

バランスの良い暮らし

岡崎さんは現在、ご主人と子供2人の4人家族。自宅のある横浜から横須賀にあるアトリエに毎日通っており、平日は陶芸に勤しみ、休日は子供を連れて緑が豊かな田舎を楽しむ生活をしているのだそうです。

「結婚と同時に、祖父から譲り受けた横須賀の地に窯を作り、アトリエにしました。陶芸界では自分の窯を持つことを『独立』と言う風習があるんです。最近では共同窯を使う方も多いので必ずしもではないのですが…アトリエは小さい頃からの思い出が詰まった馴染み深い場所で、心が休まります。山や海も近く、とてもいい環境です」アトリエに備えた窯は150個もの作品が入る大きな電気窯。仕事は平日の9~13時のたった4時間で、月に100-120個もの作品を作っているのだとか。「二人目の子供が幼稚園に通っているので、調整しながら仕事をする必要があります。加えて、肉体労働かつ集中力が必要な仕事なので3時間が限度。陶芸の仕事は出産前からずっとしており、仕事のペースを掴みやすいのでこのような働き方ができるのだと思います」

日々の仕事やプライベートでは、無理なく過ごすことができるスケジュールを大切にしているという岡崎さん。海に行ったり、川を散歩したり、観葉植物に水やりなどをすることで疲れがほぐれる気がするのだと言います。「今は横浜と横須賀を行き来していますが、そのうち横須賀に帰ることも考えています。横須賀は10年ほど住んで、沢山の魅力に気付きました。自然が豊かで、周りの人との付き合いも穏やかで楽しい場所です。一方で、横浜は少し歩くと素敵な雑貨屋さんに出会えたり、新しい情報がすぐに入ったりするので刺激的で都会ならではの便利さがあります。2拠点の生活を経て、都会と田舎、どちらの魅力にも気付くことが出来ました」都会と自然のいいところをどちらも知っている、バランスの良い暮らしです。岡崎さんは、どのような環境でも前向きに捉えることが出来る、豊かな心の持ち主のようです。

  • 素焼きをする前の状態の陶器。土から形作られた陶器は2,3日ほど乾燥させてから加飾をし、窯焼きします。「粘土は大きさも形も自由自在で、扱いやすい材料だと思います」
  • 横須賀にあるアトリエ。土練りや色付けなどの加飾作業などは、光がよく入る中央の台で行うそう。奥にある窯は、笠間の修行時代から使い慣れた型を使用しているのだとか。

Section.03

器を広げる

ファッション業界から陶芸家の道へと進んだ岡崎さん。一見すると関係がないようですが、岡崎さんの作品には、その歩みがしっかりと反映されていました。

「着るだけでスイッチが入り、背筋を伸ばすことが出来る洋服のように、お気に入りの器を使うだけで食事の雰囲気をがらっと変えることが出来ます。一人でも、どんな方でも。その器を使って、普段の食事が楽しいものになるようにしたい。だから、普段使いしやすいような器作りにこだわっているんです」まるでファッションのように、器は食卓を彩るアイテム。器のために料理を頑張るのではなく、楽をするために器を使って欲しいと言います。

逆に、ファッションと器の違いはというと、背伸びが出来るかどうかだと言います。「洋服はかっこよく着飾ろうと思ったら、背伸びしてできてしまんですよね。でも陶器は作者のありのままが出てしまうというか、上手いフリをして作っても、器を見ればすぐにばれてしまう。だから、心を乱さずに一つ一つ丁寧に作ることが大事なんです」

 

岡崎さんの器は強く主張するでもなく、心を和ませてくれる優しさがあります。「日常で使う器だから、加飾だけでなく使いやすいサイズ感にこだわっています」日常的に使いやすいからと、リピーターになる人も多いのだそう。「自分の食卓でも陶器を使っていますが、自分の作品は使わないようにしています。陶器の色を決める釉薬や焼き方は作家の個性ですが、使いやすさはとても参考になるので、色々な器を使いながら研究しているんです」

岡崎さんの作品の特徴は使いやすさだけではありません。「作風を決めている訳ではないのですが、作品はひと目で誰が作ったかがわかるようなものがいいと考えています」代表作のトンボモチーフは、笠間での修行時代に見かけた羽黒トンボなのだそう。その他にも、自然を感じるやわらかい作風が特徴的です。

「いつか海外のギャラリーで個展をして、自分の作品を手にとって頂く機会を増やしたいと考えています。陶芸家にとって、自分の器を使って喜んでくれることが最大の喜び。より多くの方に自分の作品で食卓を楽しんで欲しいんです」2018年、パリで開催された日本文化の総合博覧会『ジャパンエキスポ』へ参加した際、和洋折衷な岡崎さんの器はパリの方の目にはオリエンタルなものとして目に映ったようで、手に取りながら楽しんで見てくれたのだそう。「毎日やるべきことを一つ一つ積み重ねていたら、いつの間にか道ができている。そんな生き方がしたいですね」

海外での個展は、子供が育ってからの楽しみなのだとか。岡崎さんのチャレンジはいつまでも続きそうです。

  • 代表的なトンボモチーフの作品。白の釉薬は長石(ちょうせき)と藁灰(わらばい)、土灰(どばい)、マグネシウムやチタンなどの金属を混合して作られるのだそう。
  • 土を削ったり切ったりするための仕事道具。岡崎さんの鮮やかな手付きによって、土の形があっという間に変わっていきます。

Section.04

がんと関わる

「将来的にやりたいことは、もう一つあります。それは、がんと言われても動揺しない社会を作ることです。爽やかな笑顔で明るい雰囲気の岡崎さんですが、2017年には乳がんを患い、闘病生活を送っていた時期があったそうです。「社会では、がんは死と直結するイメージがあると思うので、子供に気の毒そうな目を向けられるのが耐えられず、自分ががんであることを公表しませんでした。現在の医療ではがんは必ず治る訳ではなくとも、良くなる人も多いのが事実。普通に社会生活を送ることができるのに、現実とイメージの乖離があります。そのことで、息苦しさを感じる方も少なくないんです」『がん』と一口に言っても、病状は人それぞれ。Aの薬で改善する人がいれば、B,C,D…と試してEで改善する人もいて、100%治療結果がわかるものではないそうです。「病気に立ち向かっている時に、周りに理解を求めながら不安と戦うのはとても大変なことだと感じました。がん患者の生き辛さをなくしたいという思いから、『Cancer X』というがんを取り巻く社会を包括的に変えていく事を目指した社会啓蒙の社団法人を立ち上げました。当事者だけでなく、行政担当者、医療従事者、企業の人事担当者や支える家族など、沢山の人達が集まって、がんの問題について解決策を模索していきたいと、同じ思いを持った仲間たちと一緒に活動しています」今は主に、2月4日「WORLD CANCER DAY」に年に一度のサミット開催を中心に、様々な活動を行っています。「Facebookで告知して、オンラインでもZでイベントを開催したり、来年は1月31日から2月6日までオンラインでWorld Cancer Week 2021というイベントを計画したりしています。まずは参加して、がんについて少しでも知ってほしいと考えています」世界では毎年新たに100万人ががんになっており、その数は生まれてくる子供より多いのだそう。自分だけでなく、家族や、大切な人が罹患した際に、支えになるのは正しいがんの理解。近年、Cancer Xを始めとしたがん当事者の情報発信は増加傾向です。知りたい気持ちを大切に、上げられた声に耳を傾けてみませんか。

  • Cancer X最大のイベント 『CancerX Summit』は、毎年2月4日のWORLD CANCER DAYに開催されます。
  • CancerX Summit 2019で登壇した時の岡崎さん。この時は小泉進次郎議員とファミリーマートの澤田貴司社長、MDアンダーソンがんセンター医師の上野直人先生とともに、「がんと社会」について話しました。自身のみならず、家族や友人、職場の方の罹患など、様々な形でがんと関わる可能性が大きい中、病気の正しい理解を普及していきたい、と話します。

Section.05

毎日続けるために大切なこと

アトリエでの陶芸生活は集中して作品を作ったり、作品を移動させたりするため、精神的にも肉体的にも負荷がかかります。「葉山のジムに通って、パーソナルトレーナーにアドバイスをもらいながら筋力維持を心がけています。気持ちのアップダウンが無いよう、リフレッシュにもなりますし、腰を傷めないように腹筋を意識してトレーニングしています」トレーニングも仕事のうち。筋力が衰えると体調を崩しやすくなるのだそうです。

「アトリエでは砂埃がすごいので、乾燥を感じたり髪のきしみが気になることもあります。かさつきが気になるのでアウトバスのセラムを使って髪のケアをしています」お気に入りのアイテムは、精油やアロマなど香りが良いもの。自然が好きな岡崎さんらしいお好みです。

  • 「菊練り」という材料を練る手法を用いて土を練る岡崎さん。修行時代はこの4倍の大きさもある粘土を全身を使って練る作業が、一日の仕事の始まりだったのだそう。
  • 窯焼きが終わったら少しだけ扉を開けて熱を逃し、徐々に冷ましていきます。窯の内部では、位置によって温度が異なるため、陶器の大きさや形によって配置を変えているのだそう。

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髪型をよく変えるという岡崎さん。現在のミディアムヘアもお似合いですが、ロングヘアからベリーショートまで、様々なヘアスタイルのご経験があるのだとか。

そんな岡崎さんにお勧めなのがRe:>>>。ベーシックラインのエントリーモデルで、様々な髪型・髪質の方にお使い頂けます。特に、砂埃などで乾燥が気になるという岡崎さんには、髪内部にうるおいを閉じ込めるCMC類似成分リピジュア®が髪を補修し、しなやかな髪へ導きます。シャンプーの洗浄成分はやさしさにこだわったアミノ酸系界面活性剤を主体とした洗浄成分で、地肌や手指のうるおいを守りながら洗い上げます。自然の香りが好きな岡崎さんにぴったりのベルガモットの香りで、お子さんと一緒に贅沢なヘアケアタイムをお楽しみください。

※リピジュア®は日油株式会社の登録商標です